其の3「支えてくれる人がいる」 By たっちゃん
[2009/10/26]

私は生まれつき足に障がいを持っています。病名は「二分脊椎症」。説明すると難しいのですが、簡単に言うと神経の病気です。もう29年の付き合いで、これからずっとの付き合いです。

しかし、不自由なんかじゃありません。私の中では「不自由=自由がない」と思っていて、基本的に私は自由人です。「支えてくれる人がいるから生きていける。」そう思って日々を生きています。

私が生まれたのは1980年9月。父35歳。母34歳。決して若くはない夫婦の間に次女として生まれました。でも、この2人の間というかこの家族に生まれたお陰で、楽しい人生です。 生まれた時の家族構成は、父、母、父方の祖母、11歳年上の姉、そして私。姉は嫁いで、義兄と姪っ子2人も家族の仲間入りしています。 実家は元々、祖母の代から小さな旅館をしていて、それを嫁いできた母が継ぎ 父も自営業をしていたので会社の人や宿泊のお客様など、日々色んな人と触れ合える環境にいて、尚且つ両親とも私を何処へでも連れて行く、そういう環境に家族皆が置いてくれたからこそ、今の私があるのだと思います。

そんな私も大人になり、ビーズアクセサリーインストラクターの資格をとった矢先、ある出来事がきっかけで「パニック障害」になってしまいました。小学校に通うようになって、いじめにあっても、大好きだった祖母や父が亡くなっても乗り越えて来られたのに、自分はなんて弱いんだろうと思い、訳もなく泣いて、怒って不安定な日々を過ごしていました。そんなときも、支えてくれたのは家族、友人でした。
いつパニックになるか不安でいっぱいの私を、「発作起きても一緒だから大丈夫。置いて逃げたりしないから。」と言って外に連れ出してくれた友人がたくさんいました。集中力がなくなり、大好きだったビーズに触れなくなっても、ずっと待っていてくれたお店のお客様もいました。発作が起きて動けなくなった私を担いでエスカレーターを駆け上ってくれたり (ホントはめっちゃ危険です・・)、ストレスの発散の仕方も分からず「食べる事」に走った私を「美味しそうに食べるね〜」と笑って見ていてくれた人もいました。 そして何より、何があっても喧嘩しても泣き叫んでも受け止めてくれる母がいました。今でも、みんな大切な人達です。

あれから、ずいぶん普通の生活が出来るようになり、まだ一部の薬は手放せませんが、一人である程度の距離までは電車に乗って、月に1度出演しているラジオ番組のスタジオまで行けるようになったり、友達と一緒に飛行機に乗って旅行できるようになったり、一人で(長時間はまだ難しいですが)ショッピングも出来るようになりました。

色々な苦しい経験があったけど、私は「支えてくれる人」がいたから乗り越えて生きているのだと思います。苦しい時、ずっと支えてくれた人達のために、今度は私が「支える人」になっていきたいと思っています。

2009年10月26日 たっちゃん



20年程前、私がまだ劇団「昴」の座員だった頃、R県の県立高校全校に生のお芝居を見てもらう〜という県庁の企画で5年間、毎年2週間ずつR県に通ったことがありました。その最初の年に一泊した民宿のお嬢さんが‘たっちゃん’です。
玄関前でマイクロバスを降りた私たち一行を、カーテンの隙間から見つめている女の子がいました。でも目が合うとカーテンの陰にサッと隠れてしまいます。夕食の時でした、食堂でワイワイ言いながら食べている私達に何か欲しいものがあると、台所に通じる引き戸がほんの10センチばかり開いて、サッとその欲しいものが出てくるのです。「あ、ビールの栓抜きは…」とテーブルの上を探していると‘栓抜き’がサッと出てきます。「胡椒をかけたいな〜」というと‘胡椒’が出てくるのです。私達が受け取ると、その手はサ〜っト引っ込んで戸も閉まってしまいます。何度目かに、あれ〜?!だあれ〜?!と引き戸を大きく開けてみると、小さな女の子が恥ずかしそうに隠れています。流しに立って洗い物をしている民宿のお母さんに「たっちゃん、ちゃんと挨拶せんね」と言われ、出てきた可愛い女の子たっちゃんは、この家の次女で、小学校3年生でした。出てきてお互い自己紹介し合えば、とてもはきはきした元気いっぱいの明るい女の子です。ただ両足に補装具を着けている以外は…。
私達の泊まっている2階の部屋へは一度も入ったことがなく「いつか2階に上がってみたい」と言いました。その夜は階段の上がり口でみんなでトランプをしました。ケラケラとよく笑う女の子です。でもさりげなくお母さんのチェックが入ります…あまりはしゃぎ過ぎないようにと。翌日の朝お母さんから一冊の文集を手渡され「この病気のことをもっと多くの人に知って欲しいんです」「たっちゃんは我が家の天使です。うちに生まれて来てくれてありがとう、と思ってます」と。
R県の旅公演でたっちゃんの民宿に泊まったのはこの一泊だけでしたが、私達とたっちゃん家族のお付き合いはそれからもずっと続きました。今回、私のホームページに手記を書いて欲しいとお願いすると、快く引き受けてくれ、こんなに本音でぶつかってくれました。 ありがとう、たっちゃん!!
土井 美加
【たっちゃんが出演しているラジオ番組】

「ぱのらまフライデー」
 長崎シティFM(コミュニティーFM) 毎週金曜日11:00〜13:00放送
 ※たっちゃんの出演は、毎月第3金曜日の12:15くらいから約15分間(コーナー名はありません)

「満腹ワイド・ラジDONぶり」
 NBCラジオ 毎日12:00〜16:00放送
 ※たっちゃんの出演は、毎月第3木曜日の14:00〜約15分間。コーナー名は「目指そう!バリアフリーの人と街」




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