其の7「哀悼〜江崎 甲さん」 By 土井 美加
[2011/1/20]

このコーナーに、半生を書き下ろして下さった、と言っても過言ではない原稿を書いて下さった江崎 甲さんが、昨年9月に亡くなられていました。昭和6年12月16日、サイパン生まれの江崎さんは今年80歳になるはずでした。卵巣癌だったのだそうです。今は秩父の聖地公園で眠られています。昨年夏、自分の忙しさに追われ…音信が途絶えたのに…本当に申し訳ありません。
江崎さんとは、鯨エマさん主宰の海千山千プロデュース「眠れぬ夜」初演で出会いました。ちょっぴり不気味な夜の病院のお話で、私は末期癌の息子に迷惑がられながら毎夜付き添う母役、江崎さんは夜の院内を徘徊する認知症の老婆役でした。「本物には適わない」などというカゲクチにもめげず、若者たちに混じって歌や踊りも頑張る江崎さんの怪演ぶりが、今も目に浮かびます。頑張りすぎて風邪を引き、本番では歌えなくなってしまって「すみません、すみません」とおっしゃっていた心のうち…本当はとても悔しかったことと思います。人一倍頑張りやさんの江崎さん。
サイパンのバンザイ岬で親兄姉を無くし、戦後の日本をタイプライターとして生き、ワープロ、そしてパソコンの時代になり仕事が減り…でもめげるどころか60歳を過ぎてから女優になりたいという夢を実行に移した江崎甲さん、本当に素敵な人生です!激動の日本を思いっきり生き抜かれた江崎さん、お疲れ様でした。
江崎さんの手記まだ読まれてない方は是非「ワタラッパンな女たち〜第一幕」をご覧下さい!
2011年1月20日 土井 美加



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