2010年9月3日(金)~6日(月)

第1話:シャンソンしてて、日が暮れて(作/わたらっぱん工房)
第2話:よりそう(作/塩塚晃平)

■出 演■
和田 太美夫 黒川 薫 土井 美加
ビデオ出演:箱木 宏美 みよ子

わたらっぱん第2回公演「よりそう~第1話シャンソンしてて、日が暮れて~第2話よりそう」おかげさまで、9月6日無事に千秋楽を迎えることができました。残務整理に追われるうちに、気がつけば1ヶ月経っておりました。
今回の公演、無謀にも新作書き下ろしの2本立て、一時は心が折れそうになりましたが、何とか無事に公演まで漕ぎつけ、実はそこそこ評判も良く(うふふ~)いろいろと悪条件の中(土井の非力を痛感しました)ご協力いただいた方々にも、何とか顔向けできるかな…と思えるようになり、一息ついたところです。今回のテーマは「よりそう」。そしてこれからもこのテーマを追いかけていくつもりです。何故「よりそう」なのかは、改めてお話しするとして(5年前の或る方との出会いからお話ししなければならず、話しが長~くなりそうなので)、今回の公演の話にしぼりますね。

★一話目は‘認知症’のおばあちゃんが語る彼女の人生、輝いていた時間。何度も同じ話を繰り返す中にもスパークする彼女の魂!でも生活は日々続いて行くわけで…家族は耳にタコの自慢話にはすでに耳を傾けてくれなくなっており、でも、しかし、おばあちゃんだって生きているわけだし、まだまだ輝きたいわけだし…(輝いていて欲しいし)…どちらの気持ちも痛いほど分かるし…結論なんて出ませんが、そんな事を考えたり思ったりすることがいいんじゃないかな?!と思うのです。彼女の話を聞いてくれるのは、家族ではない『誰か』でも良いわけだし。家族も‘悩む’のではなく‘想う’、‘そっと寄り添い、想えたらいいな’、と思うのです。この作品は90歳のおばあちゃんを仙台弁でやりました。初めて生まれ故郷の方言で芝居しました。台詞を覚えていられれば、当分やれますね!?(大笑)
そしてこの芝居のもう一つのテーマ~おばあちゃんの一人語りの中に登場した戦前のスター歌手「関屋敏子」さんを思い出していただきたい、知っていただきたいという思いで作りました。

★2話目は、‘鬱’の家族を抱えることになった女の、泣きながら笑いながらの成長の記録です。
「それでまずね、朝は散歩をします。いい?朝の7時から8時の日光が脳を活性させるのに一番いい時間なんだって。引きずってでも散歩に行くから安心して。それから食事。納豆、バナナ、卵白、乳製品、必ず食べること。炭水化物もしっかりね。脳内物質のセロトニンを作るのに必要なの。この物質が著しく減ると、鬱になるんだって。なぜ減るかは完全にはわからないらしいのよ。とにかく意識してとること」これ、実は、上演の際はカットした、ラストシーンの冒頭の台詞です。
人間の「脳」と「心」ほど不思議な謎だらけのものはありません。どうしてこうなるのか分からなくなった時、どうしようもなく怖くなった時、『誰か』があなたに寄りそってくれて、こんなことを言ってくれたら、少し安心しませんか?闇雲に恐怖感でいっぱいにならずに、一回深呼吸して「とりあえず、納豆でご飯を食べて、朝の散歩に出てみようか?!」なんて思えるかもしれませんよね!難しいことはなるべく考えないで、あせらずに!そんなことを言ってくれる誰かがすぐ隣にいるかもしれません、あなたが耳を澄ませば。
そしてもし、あなたの隣に恐怖でいっぱいの人がいたら、その『誰か』はあなたのことかもしれませんよね!?
先ほど主人公の女の‘成長の記録’と云いましたが、人間はそう急に成長できるわけもなく、彼女もまだまだ人間が出来たわけでもなく、どうしたらいいのか分かったわけでもなく、ただ寄り添い「一緒に考えよう」と思うようになったという段階です。でもこれがなかなか、そうできるものではありません。特に‘自己中’で生きてきた人間にとっては。だから、この主人公と鬱の家族に、私は今も、小さな声で“頑張れ”と云い続けています。鬱の人に頑張れと云ってはいけないのだそうですが、やっぱり心の中では“がんばって”と祈ってしまうのです。
そんなこんなの思いで作った2つの物語です。またいつかこの思いの続きが形になる日を、待っていて下さい。
ありがとうございました。
2010年10月5日 わたらっぱん 土井 美加

【舞台写真はこちらです!】

『よりそう』のチラシはこちら
おもてう ら


【これまでの公演】